うつ病とは
うつ病は、脳のエネルギーが欠乏した状態であり、それによって憂うつな気分や意欲(食欲・睡眠欲・性欲など)の低下といった心理的症状が継続します。また、頭痛やめまい、便秘や疲労感など、様々な身体的な自覚症状を伴うことも少なくありません。
つまり、脳がエネルギーの欠乏状態に陥り、脳の統括している心身のシステム全体にトラブルが生じている状態とも言えます。
うつ病の患者数は近年、増加の一途をたどっており、95万人以上にのぼると報告されています(厚労省:平成23年のデータ)。
うつ病は特別な人がかかる病気ではなく、誰もがかかりうる、ごく身近な病気なのです。
うつ病の症状
うつ病は一般に、アメリカ精神医学会(APA)が定めた精神疾患の分類指針であるDSM-IV(ディーエスエム・フォー)の診断基準をもとに診断がなされています。DSM-IVにおけるうつ病の診断基準には下記のような9つの症状が記されています。
以下の症状の5つ以上を満たして、かつそのうちの少なくとも1つに(1)か(2)を含み、しかも症状が2週間以上続いていて、本人が苦痛を感じている、あるいは生活に支障をきたしているといった場合に、うつ病と診断されます。
- (1) 1日中ずっと気分が沈んでいる
- (2) 何事にも興味がわかず、楽しむことができない
- (3) 食欲の低下(あるいは増加)、体重の顕著な増減がみられる
- (4) 寝付けない、夜中や早朝に目が覚める
- (5) 動作や話し方が遅い、またはイライラして落ち着きが無い
- (6) 疲れを感じやすい、気力がわかない
- (7) 自分には価値が無い、人様に申し訳ないと感じる
- (8) 仕事や家事に集中できない、何かを決断できない
- (9) この世から消えてしまいたいと思う
うつ病の原因
うつ病は、脳のシステムに何らかのトラブルが起きた状態と言えます。脳の中には、神経細胞間での情報伝達を介在する“神経伝達物質” (セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンなど)というものがあり、それらが減少してしまうと、うつ病が引き起こされると考えられています。ですから、うつ病は気の持ちようの問題などではなく、ましてや心が弱いためにかかる病気でもありません。そのため、気力で治すなどといったことは不可能ですし、そうした精神論は、かえって病気の悪化を助長しかねません。うつ病には薬物等による適切な治療が必要なので、この病気が疑われたら、早めに専門の医療機関を受診しましょう。
うつ病の治療
うつ病と診断されたとしても、すべての患者さんに対して同じ治療が行われるわけではありません。
医師は問診の際に、
- どのような症状が、どのくらいの期間継続しているか
- どのような経過をたどって現在に至っているか
――などをはじめ、患者さんの現在の状態や、病気に至った背景を詳細に聞き取ります。
そして、患者さんの症状や生活環境、性格などを十分に考慮しながら、一人一人に合った治療法を選択していきます。
うつ病には、主に下記の3つの治療法があります。
休養
うつ病の患者さんは心身のエネルギーが枯渇していますので、エネルギーを充電するために、休養はとても重要な治療と言えます。医師から休むことを勧められたら、思い切って仕事や家事、学校などを休みましょう。場合によっては、入院するのもよい手段です。
精神療法
心理的側面から精神疾患の治療を図る治療法のことです。
精神療法では、医師や心理カウンセラーなどが、患者さんとの対話を重ね、一緒に考えながら、問題解決の方法を探します。
精神療法の代表的なものに認知行動療法があります。認知行動療法とは、物事の捉え方(認知)や問題となっている行動を見つめ直し、自分の陥りやすい思考や感情のパターンに気づいて、うまく心をコントロールできるようにし、ストレスを軽減していく治療法です。
薬物療法
症状を改善し、また再発を予防するために、薬物療法は行われます。
薬物療法の中心は「抗うつ薬」です(ケースによっては、抗うつ薬に加えて抗不安薬や睡眠薬などが用いられることもあります)。
抗うつ薬にもいくつかのタイプがあり、患者さんの症状や状態に応じて使い分けます。
抗うつ薬は効果が現れ始めるまでに通常1週間~数週間かかります。効果が現れないからといって、勝手に薬を止めてはいけません。また、再発を防ぐために、完全に症状が無くなった後も、医師の許可が下りるまでは飲み続けることが大切です。